最近の幼児教育において世界的に注目されている「非認知能力」という言葉を聞いたことがありますか?先進国がこぞって研究を進めている「非認知能力」は、これからの時代を生きていく子どもたちにとって必要なものです。
しかも、この「非認知能力」、1~3歳くらいまでの乳幼児期が要というから、乳幼児のお子様を育てていらっしゃるママパパさんならば知っておくべきことと言えるでしょう。
今回は、「非認知能力」とは一体何なのか?そして、「非認知能力」の具体的な伸ばし方、鍛え方を、育児経験者であり、多くの子どもたちと関わってきた私自身の経験と共にご紹介していきます。
目次
非認知能力とは何か?
まず、この「非認知能力」とはどういったものなのでしょう。
平たく言うと、「社会において自分の感情、行動を上手にコントロールする力」です。具体的には、大きく分けて3つに分けられます。
- 「忍耐力」・・・目標に向かって最後まで粘り強くがんばろうとする力
- 「社会性」・・・周りの人たちを受け入れながら、上手に関わるコミュニケーション能力
- 「感情のコントロール力」・・・自分自身だけでなく周りの人たちに対しても“ネガティブ”を“ポジティブ”に変換できる力
少し前までは、こういった目には見えない「非認知能力」よりも「認知能力」、いわゆる読み書きや計算ができる力を伸ばしてあげた方が賢い子に育ち、将来成功すると考えられてきました。そのため、幼児早期教育が注目されてきたのです。
しかし、こういった「認知能力」は年齢に応じて身につけていけば全く問題はなく、むしろ、幼児教育で大きく伸びる「非認知能力」が高い子どもの方が将来成功している場合が多い、という研究結果が発表されて以来、「非認知能力」の重要性が叫ばれてきているのです。
では、なぜ今「非認知能力」が注目されてきているのでしょうか?
なぜ、今の子どもたちに必要なのか?
「非認知能力」に注目が集まった要因の一つに、2000年にノーベル経済学賞を受賞したアメリカのジェームズ・ヘックマン博士の研究結果があります。
彼の理論は、幼児教育を受けた子どもたちが大人になって収入が多い、持ち家率が高い、学歴が高いなどの特徴を持ち、幸せだと感じることができているのは、「認知能力」を伸ばしたからではなく、幼児教育を受けることで、先生たちをはじめとする周りの大人のていねいな関わりに触れ、「非認知能力」を身につけることができたから、ということです。
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つまり、お勉強ができるだけでは将来有望とは限らないわけですね。良い大学に行ったからと言ってよい社会人になれるとは限らないわけです。この事実は、日本の社会においてもよく耳にすることです。世の中で起こっていることは、予測不可能なことばかりだからです。
入社後1年以内に辞める最近の若者
最近の若者(オバサンくさい言い方ですいません)は入社後すぐに退職する人が多いそうですね。せっかく頑張って就職活動して採用されたのに、たった数ヶ月や数年で辞めてしまうなんて…。理由は様々でしょうが、その多くがもし「しんどいから」、「思ってたのと違ったから」とか「嫌な上司がいるから」といってすぐ仕事を辞めていたとしたら。果たして彼らには、今後長く就ける職場が見つかるでしょうか?
もし、我が子が将来そのように粘り強くがんばることをせず、周りの人たちを受け入れられずに上手にコミュニケーションを取れずにいたら…と想像してみてください。恐ろしいですね。
今、目の前でお友達の輪に入っていけない小さな我が子ならば、そっと助言をすることもできるし、手をとり一緒に輪に入っていってあげることもできます。でも、成人した我が子に「じゃあ、一緒に会社まで行って、嫌な上司に私から一言言ってあげるわ!」なんて言える親はどこにいるでしょう?
「非認知能力」を伸ばすのに大切な時期は3歳まで
この「非認知能力」の土台は3歳ころまでに作られ、幼いうちに身につけた方が良い影響が長く続くそうです。これは、脳の発達と関係しているためと言われています。日本の幼稚園や保育園の教育要領や保育指針でも、「非認知能力」を重要なポイントとして位置付けられています。
「いじめ」「ひきこもり」と非認知能力の関係
現代の日本社会では、様々な社会問題があります。「いじめ」「ひきこもり」など、若い世代が大きく影響を受け、そしてそれが成長してからも続いていきます。多様化する社会で、自分をしっかりと持つための土台作りは必要不可欠であると、私は思います。どんな嵐が来ようとも揺るがない強靭な土台です。
「幼児教育で大切なのは手を離さないこと」と長年教育現場で活躍してこられている先生が言っていました。小学生になれば「手は離しても目を離さないこと」に変わるそうです。なるほど、と思います。大人が丁寧に細やかに育ててあげられるのは幼児期だけです。大人がすぐそばにいて見てくれているという安心感の下、子どもたちは集団の中に入っていけるのです。
私が指導していた英語活動での出来事です。小学校低学年の集団がもめていました。私はしばらくそばで見ていました。すると、話し合おうとリーダーシップをとる子、周りの空気を読みながら黙っている子、リーダーシップをとる子にたてつく子、など様々です。
大丈夫。子どもたちは困ったらきちんと大人を頼ります。その時は私に頼ることなく彼らは自分たちで解決していました。たてついていた子はしばらくぶつくさ言っていましたけど、「まあいっか」とのちに笑顔で一緒に遊んでいるのです。
困ったら大人を頼るのは社会性が身についている証拠ですし、「まあいっか」とのちに遊んでいるのも感情のコントロールができている証拠ですね。みんなきちんと幼児教育で「非認知能力」をしっかりと身につけているのです。
では、その「非認知能力」は具体的にはどうやったら身につくのか?みなさん、気になりますよね。
心配はご無用です。難しいことは全くありませんよ。
具体的な「非認知能力」の伸ばし方、鍛え方
子どもが「非認知能力」を伸ばすためには、自分が大切だと思われている安心感、無条件な愛が絶対だと言われています。なので、親である私たちができることは愛情をもって我が子を温かく見守ることです。
家庭内でできる「非認知能力」の伸ばす方法
子どもの好奇心を尊重しよう!
トイレットペーパーをガラガラガラと廻す廻す廻す…
ティッシュの箱からティッシュを出す出す出す…
うん!目をつぶりましょう!そのうち飽きますから。
共感し、認めてあげよう!
たまに余裕のある時に「それ、楽しいの、分かるわ~」と言って、一緒にトイレットペーパーをガラガラガラ…やって子どもと一緒に笑おう!
パズルができなくてイライラ…している時、
お母さんも分からないふりをして、一緒にパズルのピースが合わさる楽しさを共感します。
失敗は成功の母!どんどん失敗させよう!
牛乳をコップに自分で入れたがる子供に手助けをせず、自分で入れさせてみよう。
こぼれても大丈夫。子供用の雑巾を用意して、吹く方法を教えて、自分で拭いてもらう。
子供自身が一人で取り組めるように、適度な距離感で見守る
なーんだ。よく育児書とかに書かれている「ほめて育てよう」とか「怒らないで育てよう」とか、そういうことか。と思った皆さん。そのとおりです。私も、そう思ったうちの一人です。
しかも、ほめ過ぎてもダメだし、もちろんガミガミと怒るのも良くない。温かく見守ろうといっても、放任や無関心ではだめ。適度な距離感を保ちながら、助けを求められたら応じてあげる。それが、子どもにとって「安心感」につながるのだと思います。
でも私がなるほど、と思ったのは、やり遂げられた達成感よりも子ども自身が面白がって一生懸命取り組めたという体験の方がより「非認知能力」を伸ばすことができる、とのこと。大人はついつい先回りして口を出してしまいますが、それはNG。「できたね!」ではなく、「できなかったけど、がんばったね!」と認めてあげましょう。
「いや~むりむり。そんな余裕ない!」と思っているみなさん。はい、私もそうです。わかっちゃいるけど、ガミガミ怒ってしまうし、口出しもしてしまう…。でも、私が思うに、常にこうでなければならないってことではないと思います。
たまに、余裕のある時でいいから①~③を実践してみましょう。すると、子どもの表情がパッと明るくなり、とてもうれしそうに喜ぶんです。そこで、「このあいだは怒っちゃってごめんね。あの時も失敗したけど、一生懸命やってえらかったよね。」と伝えてあげればいいんです。大人だって人間ですから間違えることもある、と自分自身で認め、それを子どもにも伝えましょう。
モンテッソーリ教育でも大切にしている考え方です。
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まとめ
様々な犯罪や事件がニュースで報道され、以前よりもそういった出来事が身近に感じられる昨今、被害者にも加害者にもならないために、自分の身を自分で守るためには、この「非認知能力」がとても大切なのだと思います。我が子には、感情に流されず、人と関わりを持っていくことは楽しいことなんだと思って生きていってほしいですよね。
特別なことをする必要はありません。親である自分たちが、かつて自分の親や周りの大人から自然に教えてもらった当たり前のことを、我が子にも教えてあげればいいだけなのです。やりたいことには全力で取り組む、あきらめないで最後までがんばる、失敗は成功の母、などなど、どれもこれも決して机の上で学んだことではないはずです。
干渉して、過保護になりすぎず、肩の力を抜いて、我が子をおおらかな気持ちに見守ってあげましょう。もっと身体を使って一緒にたくさん遊びましょう。子どもは大人の背中を見て育ちます。大人が楽しそうにしていると、子どもも楽しいと思うものです。
親子での体験を通して身についたものは、一生の宝物になりますからね。
と、私自身も自分に言い聞かせてます。