我が子にはベストな教育を受けさせたい!そういった親心は世界共通だと思います。
そんな中、シンガポールは教育水準が世界トップクラスの教育熱心な国として有名ですね。
OECDによると、80の国や地域で15歳の子供に一斉に行われるPISAのテストスコアで、シンガポールがダントツ首位となっています。総合ではもちろん、全ての科目で首位を取っているというから驚きです。
シンガポールでは一体どんな教育がされているのか、気になりますよね?
実は、日本では考えられないシステムが存在していました!!
シンガポールの高い学力の秘密と、驚愕の教育システムをご紹介します!
世界の子どもの学力調査、PISAとは?
Programme for International Student Asssesmentの略で、経済協力開発機構(OECD)による国際的な生徒の学習到達度調査のことで、日本では「国際学習到達度調査」とも言われる。
15歳の生徒を対象に、読解力、数学知識、科学知識、問題解決を3年ごとに調査し、2015年は、72の国・地域が参加。
読解力、数学的リテラシー、科学的リテラシーの3分野の平均スコアは、以下の通りで、シンガポールがダントツ1位となっています。
Average Score of PISA Mathematics, Science and Reading
1. |
Singapore |
551.7 |
2. |
Hong Kong |
532.7 |
3. |
Japan |
528.7 |
4. |
Macau |
527.3 |
5. |
Estonia |
524.3 |
6. |
Canada |
523.7 |
7. |
Taiwan |
523.7 |
8. |
Finland |
522.7 |
9. |
South Korea |
519.0 |
10. |
China |
514.3 |
シンガポールの教育の仕組み
シンガポールでは、3歳ころからプリスクールに行く子供がほとんどで、6歳からはPrimary School(小学校)、12歳からSecondary School(中・高等学校)へと進んでいきます。
義務教育はPrimary School のみですが、ほぼ全員Secondary Schoolまでは進学します。
そして、Secondary School を卒業後、大学進学を目指す生徒は大学準備のためのPost Seconderyという大学進学準備コース(通常2-3年ほど)に進みます。
こちらは任意の教育機関ですが、大学進学を希望する場合は必須になっており、この大学準備コースでの成績によって進学する大学が決まります。
シンガポールの教育の特徴
シンガポールの公用語は英語ですが、母国語など2言語を習得することを義務化しています。英語を第一言語として使いこなすことで、グローバルに活躍する人材育成を可能にしています。
シンガポールは狭い国土で資源に乏しく、人材こそが国の大切な資源であると考え、政府は教育に力を入れてきました。
シンガポールでの教師の社会的地位は高く、尊敬される職業となっています。シンガポールの教師は全員、国立教育学院(NIE)でトレーニングを受け、トップ層の卒業生達が教師に選ばれます。
政府の力強い支援、質の高い教師による授業、英語を中心とした2言語教育、徹底した能力主義によるクラス分け、こういった要素がシンガポールの高い教育水準を作り上げています。
12歳で人生を決めるテスト、PSLEとは?
日本で言う小学校にあたるプライマリースクールまでは一律で授業を行うシンガポールですが、プライマリースクール卒業後は道をはっきりと分けられることになります。
卒業時にPSLE(Primary School Leaving Examination)という全国統一テストを行い、このテストの結果を受けて、中学校にあたるセカンダリースクールのレベル分けをします。
このレベル分けというのがなかなかシビアで、その後の人生を大きく左右するものになっているのです。
PSLEのテストで結果が出せれば、大学進学へ向けたクラスへと進み、特に優秀な一部の生徒はエリートコースへと進みます。
しかし結果がふるわなかった場合は、技術系のいわゆる職業訓練コースへと振り分けられることになります。
この時点で技術系のクラスになってしまうと、大学への進学は至難の技となります。
希望は残されていないわけではないのですが、PSLEで技術系に振り分けられた生徒が大学へ進もうと思うと、より複雑なプロセスと年数を要します。
一度きりのテストで、その後の人生が決められてしまうと言っても過言ではありません。
そういった事情から、親たちはこのPSLEでいい結果を出そうと必死になります。12歳の子供に多大なプレッシャーがかかっているのです。
早期に教育方針を決めるメリット
シンガポールの教育システムでは、12歳という早い時期に将来の道筋を分けることによって、勉強な苦手な子でも手に職を着けさせることができます。
早い時期から職業訓練を受けることができるメリットは大きく、17〜18歳でセカンダリースクールを卒業する頃には、きちんと生計を立てていけるような技術を身につけているでしょう。
進学コースに進んだ子供たちは、その中でもレベルを振り分けられ、自分のレベルに合ったクラスで授業を受けることができます。進みの遅い子に合わせる必要もないので、無駄なく学べるというメリットもあります。
エリートコースに進学した子は、早くから英才教育を受けることで、大きく才能を開花させることも可能です。
また、PSLEという目標があることで、子供たちに熱心に勉強させる親が増え、結果的に学力が向上しているという側面もあります。
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PSLEの弊害
シンガポールに住んでいる知り合いによると、このシステムによって家庭内に格差が生じることもあるそうです。
例えば、お兄ちゃんがPSLEによって技術系コースに振り分けられ、弟が進学コースに進んだ場合、はっきりとした格差が12歳にして見えてしまいます。
まだ小学生の年齢で、こういった階級制度のような仕組みにはめこまれることに抵抗を感じる方も多いのではないでしょうか?
また、親たちがこのPSLEに白熱しすぎてしまい、睡眠時間を削るほどの勉強や、塾に家庭教師にと、子供たちが過酷な状況に置かれるという懸念もあります。
自分の将来について考えられる年齢は人によって違います。PSLEを終えてからなりたい職業や目標が出来ても、方向転換がしづらい仕組みとなっていることも問題点でしょう。
まとめ
シンガポールでは、いい教育を受けさえるためにはPSLEで高得点を取ることが全てだと考える親たちも少なくありません。
こういった行き過ぎた教育熱の影響もあってか、シンガポールは教育システムの改革を進めていると言います。
日本もかつて受験戦争が過熱しすぎたことがありました。その後、ゆとり教育をしてみたり、英語の教育法を改革したりと、方向転換をしながら理想の教育を探求しているさなかにあります。
そもそも教育の目的とは、テストで高い点数を取ることなのでしょうか。
日本もシンガポールも、長い目で見て子供の将来の可能性を広げてあげる、自立してよい人生を歩めるように準備をすることができるような教育を目指していけたらと思います。
参考サイト:シンガポール教育省HP、2015年 PISA Result