「我が子に英語が話せるようになってほしい!」と、ママ・パパになったら一度は思うはず。
でも、どんな方法が効果があるんだろう?
子どもの英語習得の方法にはさまざまありますが、その1つにお家で始めやすいCDやDVDの「英語の聞き流し」があります。
親しみやすいキャラクターが話す英語を毎日シャワーのように浴びることで、
「毎日、英語が聞こえる環境にしておくと、赤ちゃんが言葉を覚えるのと同じプロセスで英語が身につく」
「英語の音を繰り返し聞くことで、意味が分かってきて、自然に発音できるようになる」
という考えに基づき、教材もさまざま出ていますね。
でも「本当に効果があるの?」という疑問も持ったことがあると思います。
子供向け英語教室の講師経験のある私自身が、我が子の英語育児に「ディズニーの英語システム」を使った体験談と、ネットに寄せられている口コミを検証しながら、英語聞き流しの効果について考えてみました。
また、乳幼児の特徴をふまえ、聞き流しで効果を上げるための方法についても考察しています。
目次
英語の聞き流しだけでは、英語が話せるようにならない
幼児英語教育に関する各サイトで口コミや体験談を見てみると、英語CDの聞き流しやDVDのかけ流しだけを続けて、英語が話せるようになった子供は少ないようです。
英語の聞き流し体験談
- 自分が子供の時に、CD・DVDのかけ流しの環境で育った。発音はほめられることもあるが、英語が話せるようにはならず、むしろ嫌いになった時期もあった。
- 子供の時はDVDなど楽しんで見ていたようだったが、すっかり忘れていて必要なときに学習し直して身に付いた。
- 子供が3歳の頃海外で生活し、「子供の日常生活は英語」という環境で育てたけれど、それでも英語でコミュニケーションがとれるまで1年以上かかった。
など様々あります。
私も娘が4歳になる直前に、ディズニーの英語システム(DWE)を購入しCDの聞き流しやDVDのかけ流しをしました。
DVDをかけ流ししていると、「何を言っているのか、分からないから見たくない」と言われ、結局は卒業できずに退会してしまった経験があります。
なぜ、聞き流しだけでは効果が低いのか?
体験談では、英語の聞き流しは効果が低い、という意見が多かったですが、これはなぜなのでしょうか?
そもそも私たち日本人が日本語を話し始めるのは、1歳前後。それまでに生まれたばかりの赤ちゃんは、周囲のさまざまな音を注意深く聞きながら、言葉を話すための準備をしています。
視覚や触覚、嗅覚などから入ってくるさまざまな情報や刺激を受け、それに加え絶えず語りかけてくれ、泣いたら抱っこしてくれたり、片言で「アー」と言っただけでも喜んでくれたりする親の存在があって、初めて言葉がでてくるのです。
このようにしてある程度の期間日本語を聴いて、つまり母語が定まってから英語の音声にふれると、子どもの脳では雑音を聞いているときと同じ現象が起こっています。英語が聞こえてきても、理解ができていないので、単なる「音」が聞こえているにすぎません。
これでは、英語が話せるようにならないのは当然のことと言えるでしょう。
言葉の習得には人間同士のコミュニケーションが必須
これは、ワシントン大学の研究者パトリシア・クールのグループによる実験で裏付けられています。
実験では、英語ネイティブのアメリカの赤ちゃん(生後9ヵ月)たちに4週間、計5時間にわたって中国人女性の中国語による語りかけを行いました。
すると、赤ちゃんたちは中国語ネイティブの赤ちゃんたちとほぼ同レベルで、中国語が聞き分けられるようになったというのです。
研究チームは、別のグループの赤ちゃんにも「テレビ画面」を通じた中国語の語りかけを、さらに別のグループには「クマのぬいぐるみの映像を見せながら、中国語の音声だけを聞かせる」実験を行いました。
その結果、どちらのグループの赤ちゃんたちにも、中国語を聞き分ける学習効果は全く現れなかった、というものです。
このことから、赤ちゃんが言語を獲得するためには、CD・DVD等の「聞き流し」ではなく、人間の「語りかけ」による双方向のコミュニケーションが必要だということがわかります。
英語聞き流しは、乳幼児期であれば効果的
乳幼児期の子どもには英語の聞き流しが効果的ともいわれています。
赤ちゃんは、まだ母語が定まらない状態にあり、世界中のあらゆる言語の母音や子音のパターンを聞き分けることができると言われています。
また、赤ちゃんは、大人の何倍もの周波数を聞き取ることができるため、耳で聞き脳にインプットする力が優れています。
そのため、乳幼児期から英語に触れると、英語特有のリズムや発音などを身に付けることは、母語が定まったあとに学習を始めるよりも効果的と言えます。
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また、小さな音で英語を聞き流すと右脳の発達にも役立つ、という説もあります。右脳の働きには、無意識のうちに物事を理解する能力があるとされ、乳幼児期の英語の聞き流しも右脳を育てるきっかけになるのです。
でも、やはりこれらの聞き流しの「音」が「言葉」であると認識できなければ、本当の意味で英語を「話す力」を養うことは難しいといえるでしょう。
英語の語りかけ、アウトプットの場が必要
そもそも、ママ・パパが、なぜ小さい頃からお子さんに英語にふれさせたいかというと、「英語を使えるようになって欲しい、特に話せるようになって欲しい」、からではないかと思います。
そのためには、英語を聞き流すだけで、英語を話す機会そのものがなければ、英語力の向上は望めません。
日本語と同様、英語を口に出し、それに対して相手のリアクションがある、というアウトプットの機会を作ってあげることが必要になります。
幼児期のお子さんは、聞えたこと見たことをマネするのが大好き。CDやDVDで英語をたくさんインプットしたら、英語を口に出せるようになります。
子供が口に出した英語をほめてあげたり、それをママ・パパも一緒に言ってみたり、親子のコミュニケーションの中で、英語に触れていくことが大切になります。
聞き流しだけの効果は限定的なもの。語りかけやアウトプットで効果を上げましょう!
まず、英語を聞くスキルと話すスキルは別物で、聞き流しで得られる効果は限定的なものだと心得ておきましょう。
英語の聞き流しで得られる効果
乳幼児期からの聞き流しで得られる効果の主なものは、
- 英語のリズムや日本語にない発音を耳から吸収できるということ
- 聞こえた英語をマネしようとする時に、まだ口や舌の筋肉が柔軟であるため発音が良くなる。
といったものです。
英語の聞き流しが効果を発揮するためには、聞こえてくる英語に対して、視覚や体感などでの意味づけがされることです。そのためには、お子さんの年齢や発達段階に適した教材を用いることも必要です。
そして幼児期以降は、ママ・パパを中心に簡単な英語で話しかけ、お子さんが言った英語を聞いてあげ、ごっこ遊びや体を動かす遊びの中で簡単な単語を使ってみるなど、まずは楽しい双方向のコミュニケーションの場をつくることです。
ママ・パパが楽しんで英語を使う姿をみることで、お子さんはもっと言ってみたいという気持ちになります。
普段英語を使わない環境にいるお子さんたちは、覚えたこともすぐ忘れてしまいがち。生まれてすぐの赤ちゃんが日本語を発話し始めるのだって、約1年かかります。急いで無理に単語の意味を覚えさせたり、話させようとすると、かえって逆効果になり、英語が嫌いになる場合もあります。
焦らずに、お子さんが楽しんで英語を続けていく環境づくりをしてあげましょう。
参考:リップルキッズパーク、SHINGA FARM、読売新聞オンライン「発言小町」