近年「イクメン」という言葉がよく聞かれるようになりました。子育てに積極的に取り組む男性に対して褒め言葉として使われることが多いですよね。
「イクメン」という言葉自体へは賛否ありますが、共働き家庭が増えたり、家族の在り方も変わってきたりする中で男性が積極的に育児に参加するのは当然!と考える風潮になりつつある証なのではないでしょうか。
そうはいっても、まだまだ世界的に見ると日本の男性の育児参加は後進的。
英語では「イクメン」という言葉が存在しません。それは、父親が育児に参加するのはごく自然なことで、あえてそれを表現することがないからです。
今回は、欧米の育児をめぐる状況をみながら、日本人家庭の子育てについて考えていきたいと思います。
海外と日本の男性の家事・育児の時間を比較
世界的に見ると、日本人の男性の育児参加率ってどうなのか、気になりますよね。
内閣府の「6歳未満の子どもを持つ夫の家事・育児時間」という2016年のデータがあります。
このデータによると、日本人男性の家事・育児参加時間は1日平均1時間23分。この「家事・育児参加時間」には育児の他、家事・介護や看護、買い物の時間が含まれています。
育児に限定した時間をみてみると、1日たった49分となっています。
一方、日本人女性の家事・育児参加時間は1日平均7時間34分で、育児の時間は3時間45分。
日本の家庭では、家事・育児の負担の大半が女性にのしかかっていることがわかります。
また、男性の育児参加に先進的な北欧ノルウェー家庭の家事・育児参加時間をみてみると、男性が3時間12分、女性が5時間26分。
育児の時間だけをみると、男性が1時間13分、女性が2時間17分となっています。
時間だけの比較ではありますが、男女で無理ない分担をされていることがよくわかりますよね。
その他、アメリカ・イギリス・フランス・ドイツなどの欧米諸国の数値を見ても、おおむね女性2:男性1程度の比率です。
欧米諸国と比較すると、日本の男性の家事・育児参加が突出して遅れていることがわかります。
参考:内閣府の「6歳未満の子どもを持つ夫の家事・育児時間」
なぜ日本人男性は家事・育児の参加が少ない?
この結果だけ見ると「日本人男性育児しなさすぎ!」「もっとやって!」と思ってしまうところですが、日本人男性の家事・育児時間が少ないのは、決して怠けているからではありません。
大きな理由の1つは日本の労働環境です。
「過労死」という言葉が世界で知られるほど、日本の労働現場では長時間労働が多くみられます。また、飲み会や懇親の場など、仕事以外のコミュニケーションを重んじる会社が多くあります。
長時間労働は問題視され、フレックス制度など労働時間に融通を持たせる制度を導入したり、対策が取られています。2005年以降、少しずつ長時間労働(週60時間以上の労働)は減ってきているようです。
しかし、子育て真っただ中である30代、40代の長時間労働はまだまだ多いです。
役職に就いたり、責任ある仕事を任される世代ですから、なかなか仕事を早く切り上げず悩んでいる男性も多いようです。
男性は仕事、女性は家事育児、は時代遅れ
日本の社会はまだまだ「男性が外で仕事をする、女性は家で家事や育児をする」という、性別での役割分担が根強くあります。この認識も男性の育児への参加のしにくさに繋がります。
「男性をたてて、家のことをしっかりこなす」ことを誇りに思っている女性が多くて美談のように語られることも少なくありません。実際、共働き家庭のわが家は「女性は家にいればいいじゃない」「働くママなんて子どもがかわいそう」と言われることも結構ありました。
共働きが一般的な欧米は、早い段階で男女平等の意識を持ち“夫婦で”子育てをすることが浸透していますが、日本はこの感覚が世界的に見てすごく遅れています。こういった性別による役割分担が当たり前になっている時代遅れな思考を社会全体で変えていく必要がありますね。
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欧米諸国を見習って「夫婦で子育て」を当たり前に
日本の夫婦がお互いを尊重して子育てを分担するためには、男性も仕事をセーブし育児参加の時間が確保できるような職場環境が必要です。
また、上司や同僚が「子育てをする男性」について理解をして社会全体で男性の育児参加を後押しするマインドをもつことも重要になってきます。
課題はたくさんありますが、まずは「子育ては夫婦2人で協力するもの」という認識を当事者である私たちが持つこと、そして、まわりに対しても理解を深めることを大切にしながら、欧米の家庭のように、男女がお互いを尊重して役割を担い、子育てを楽しめる姿を目指したいですね。