“帰国子女はみんな英語が話せる”
“帰国子女は簡単にバイリンガルになれる”
そう思われている人はかなりいるのではないでしょうか。
しかし、帰国子女の子達を見ていて、現実的にはそう簡単ではないと感じることが多くあります。
バイリンガルになれる子とそうでない子の違いは、どこにあるのでしょうか?
目次
英語が話せる帰国子女、英語を忘れた帰国子女
英語圏に親の仕事などで一定期間滞在する場合、バイリンガルになれるかどうかは、子どもの年齢や滞在期間によるところが大きくなります。
しかし、それだけではない要素もあるようです。実例をあげてみていきます。
実例1:3歳から8歳まで英語圏の国に住み、現地校と日本語補習校に通ったA子ちゃんの場合
現地校ではすぐお友達ができ、数ヶ月後には英語を話しながら現地の子と遊べるほど、英語はあっと言う間に上達しました。
家では日本語で会話をし、補習校で日本語の基礎的なことを学びました。
ご両親は帰国後のことを心配して、熱心に日本語学習のサポートをしていました。
帰国後、A子ちゃんは日本の公立小学校に進学します。
帰国した時点では、ほぼバイリンガルと言える状態でした。
日本語でも英語でもきちんと自分の意思を伝えられます。
まだ小学校2年生だったので、日本語も勉強面で大きく遅れているということもなく、すぐに追いつきました。
勉強面というよりは、生活習慣の違いに戸惑うことが多かったようです。
しかし、英語を毎日使う生活から、完全に日本語の生活に戻って半年ほどしたころ、A子ちゃんは英語をほとんど話せなくなっていました。
子どもは覚えるのが早いと同時に、忘れるのも驚くほど早いのです。
また、学校で思わず英語が出てしまった時に、お友達にからかわれてしまい、家以外では英語を話すことを拒むようになっていました。
せっかく覚えた英語を、ほとんど使わずに生活しているうちに話せなくなってしまったのです。
しかも、8歳で帰国しているので、英語力は8歳レベルで止まっています。
磨きをかけなければそのレベルのままで、年相応の英語力は備わっていきません。
親御さんは、帰国子女のサポートもしてくれる英会話学校を探し出し、週2回通わせながら、英語のDVDなどを見せるなど、英語環境作りを始めました。
まだまだバイリンガルへの道は長いようです。
実例2:中学3年生から高校3年生まで英語圏に住んだBくん。
このくらいの年齢であれば、すでに日本語はほぼ完成されています。
A子ちゃんが英語を忘れたように、日本語を忘れてしまうということはありません。
ご両親は帰国後の進学のことを考えて、日本語の家庭教師をつけて、日本語補習校にも通いながら、現地校に通いました。
しかし、B君は現地校に行っても、授業の内容がわからず、なかなか友達とのコミュニケーションもうまくいかず苦難の日々が続きます。
小さい子どものように、言葉が通じなくても転げ回って遊ぶという年でもなく、英語の音が自然に入ってくるという感覚はありません。
それでも努力家のBくんは自分の意思でがんばり、家ではテレビの英語を必死に聞き取る練習をしたり、教科書を読み込んだりしました。親もサポートを惜しみませんでした。日本語学校の勉強もあり、忙しい日々でした。
その成果がやっと実ったのは半年ほど経ったころです。やっと意思の疎通がうまくいき、お友達とも自然に話せるようになりました。
理数系が得意だったため、得意科目では上位の成績も取りました。
帰国後は、帰国子女枠で日本の有名大学に合格しました。しかし、まだバイリンガルと言えるほどの自信はなく、周りの子に「英語しゃべって!」と言われると戸惑うそうです。
帰国子女の現実
A子さんの場合は、幼い頃ということもあり、本人は英語を苦労して覚えたという感覚はありませんでした。しかし、帰国後日本の学校に通ってからの英語力維持と向上に苦労しています。
Bくんは海外に移ってからしばらくが試練でした。かなり長い期間辛い日々を過ごしたのち、努力が報われました。しかし、それでもネイティブと言えるほどの自信は持てず、努力中のようです。
二人の例からもわかるように、子どもの頃に海外に滞在したとしても、努力なくしてバイリンガルにはなれないのです。
滞在期間が数年以内であるとわかっている場合、帰国後の生活を重視して、初めから現地の全日制日本人学校に通わせるという選択をする家庭もあります。
日本語も英語も中途半端になってしまうという事態を避けるため、英語はあくまで第2言語としてやっていくという考えです。
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バイリンガルへの道
子どもの頃に海外在住経験があるというのは、大きな財産です。
それを活かして本物のバイリンガルになれるかどうかは、親が覚悟を持って取り組み、本人が人一倍努力ができるかにかかっています。
帰国子女でも、バイリンガルになることは決して簡単なことではないということ、ご理解いただけたでしょうか。
恵まれた環境だけでなく、努力と継続なくしては、本物のバイリンガルにはたどりつけないのです。