長年、英語学習は日本人の大きな課題です。公立中高等学校でどんなに勉強しても、なかなか世界で通用する英語を話すことが出来ない日本人の実態。
アメリカの公立学校で臨時教師として少なからず教育に関わっている私としては、日本の英語教育の効果が現れるには、今後かなりの時間が掛かると思います。
2020年から文部科学省が大幅な英語教育改革を行うと唱ってはいますが、まだまだ自腹で出費して英語教育に専念した方が近道なのでは?と思わざるを得ません。
最近、英語教育で良く耳にする「イマージョン教育」。ここでは、イマージョン教育について大まかに以下の5つの内容に分けて詳しく説明していきます。
イマージョン教育のデメリットも書きますが、ただ単に「イマージョン教育が良いのか、悪いのか?」と考えるだけではなく、それぞれのご家庭でお子さんの英語教育について考える場で、役に立っていただければと思います。
イマージョン教育とは?
ここでまず基本的なことですが、「イマージョン教育とは一体何なのか?」をご説明しましょう。簡単に言いますと、イマージョン教育は、まだ話したり、読み書きしたりすることができない言語を学ぶ「学習法」の1つです。
イマージョン教育では、従来の「文法に沿った外国語学習」と違い、その外国語をある教科を通して学ぶ「ツールの1つ」と考え、その言語を使って学ぶことです。
言い換えると、外国語を他人行儀で「外から」学ぶのではなく、文法や発音を間違えながらも、とにかく使っていこう!と言う実践的な学習法です。
従来の外国語の学習法ですと、文法中心でしたが、イマージョン教育は、マスターしたいと思う外国語を使って学びたい内容を学習していきます。
今までは単語を片っ端から丸暗記したり、母国語である日本語の基本文法さえ良く分かっていない状態で外国語の文法を頭ごなしに解き明かそうとしたため、英語を外から分析するような感じでなかなか頭に入らなかったかもしれません。
イマージョン教育では、発音を良くして単語数を増やす方法として、小さい頃はお遊戯や歌を通して外国語を学べるので、子供には学んでいる意識があまりない状態で楽しいと実感でき、自然と英語をマスターできる効果的な学習法と言えます。
また、子供がある程度英語を理解できるようになると、算数や理科などの教科を英語で学ぶようになります。イマージョン教育は、もはや外国語扱いではないのです。
イマージョン教育の効果
今までの教育機関の研究調査では、モノリンガル(一般に母国語だけしか話さない人)とバイリンガルを比べた場合、バイリンガルで育った子供たちの方が知的能力が高いことが分かっています。
ただ、ここで気をつけなくてはならないのは「イマージョン教育を受けると頭が良くなる!」と簡単に考えてしまうことです。イマージョン教育がお子さんの頭に良い訳ではありません。イマージョン教育を受けると、物事の理解力が増すということです。
2つ以上の言葉を理解している人は、言葉に対する意識が高いですし、他の文化の違いにも敏感です。また、個人的な意見ですが、思考力が深くなると思います。私の息子の経験ですが、例えば「尊敬する」という言葉を説明するのに、日本語だと「人を敬う」「相手を自分より上において考える」などと言います。
ただ、過去にその言葉を使ったことがなかったので、言葉の意味が理解しづらかったです。それでも分からなかったので”Respect”だと英語で言うと、すぐに理解できました。バイリンガルの良いところは、別の言語に置き換えて説明がしやすいですし、両方の語彙数も同時に増えます。
この点が知的能力を上げる重要な鍵だと思います。2つの言語で、同じ内容やコンセプトを学ぶのは、本当にその内容を理解したことに繋がるからです。
イマージョン教育のデメリット
「じゃ、うちの子には絶対イマージョン教育を受けさせよう!」と安易に考えてはいませんか?イマージョン教育にもデメリットはあります。イマージョン教育には、完全イマージョンと二言語同時学習イマージョンがあり、どういった教育を受けさせるかは、お子さんに合ったご両親の判断が必要です。
- 完全イマージョン
完全イマージョンとは、一日中、英語生活に浸ることです。
インターナショナル・スクールに通わせるような感じです。学校に入った瞬間から、すべてが英語で表記され、話され、説明される。小さいお子さんですと、戸惑うかもしれませんが、それが生活習慣の一部になると普通に溶け込めるようになります。
- 二言語同時学習イマージョン
二言語同時学習イマージョンとは、半分英語の生活、半分日本語の生活で浸ることです。
子供をイマージョン教育で育てた経験ママの感想
私の息子の例ですと、アメリカのある公立小学校でたまたま「スペイン語イマージョン・プログラム」の抽選に当たり、入学しました。
その小学校では毎日、英語(日本で言う国語)と社会は英語で勉強し、算数と理科はスペイン語で学んでいます。
完全イマージョンのように、英語などの1つの言語で偏って学習していくのではなく、教科は違いますが、英語とスペイン語の2つの言語を同時期に勉強することにより、両言語を同時に発達させていくのが目的です。
ここでのデメリットは、日本語力の低下です。いくら日本で過ごし、日本語が話せる親が家庭にいても、一日の半分以上を英語で生活すると、日本語の能力は落ちてきます。
日本語で会話するには全く問題なくても、複雑な内容を日本語で読み書きすることが難しくなる場合があるのがデメリットとしてあげられます。
完全イマージョンを選ぶのであれば、日本語を話す親が家庭でフォローすることも念頭に置いた方が良いでしょう。
また、二言語同時学習イマージョンだから大丈夫だと安心するのではなく、お子さんのどちらの言語学習においても語彙力を伸ばすために、意識的に読書に励むと良いでしょう。
両親が英語を話せない場合
日本にいながら子供をバイリンガルに育てるイマージョン教育は、親にとって絶好の機会かもしれませんが、両親が英語を話せない場合はどうしたら良いのでしょうか?
英語学習の意識が高くなった今、お子さんの教育に熱心なご家庭は、子供の将来のためにイマージョン教育を選ぶかもしれません。
そういった家庭のご両親は、英語が話せないか、または「多少」できるが、流暢に話すことはできない場合が多いと想定されます。
言語を学ぶ初期の段階で、お子さんはとても苦労します。そういうとき、英語が出来ない親に何ができるかというと、できるだけサポートをしてあげることです。例えば、普段はテレビを見せないけれど、率先して英語のテレビ番組を見せてあげたり、お子さんが欲しい英語の絵本を買ってあげたり。
また、お子さんが英語の勉強で行き詰まっていると感じたら、「教える」のではなく、一緒に考えて調べてあげるなど、お子さんへの手助けをしてあげると、お子さんのプレッシャーが和らぎ、お子さんも英語の勉強に励むと思います。
また、この時期に両親もチャンスだと思い、一緒に英語の勉強に取り組むのも良いと思います。家庭内でも知っている英語でどんどん話してみてください。こういう時は、文法などは気にせずに、お互いが言いたいことを伝えられ、英語を楽しみながら会話のキャッチボールが成立できれば良しと気軽に取り組んでみればいいと思います。
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やっぱりイマージョン教育って高額?
最後に、親の一番の深刻な悩みは金銭的な問題でしょう。いくらイマージョン教育が良いとは言え、毎年支払う費用が準備できないのであれば、イマージョン教育を受けることが出来ません。
ただ、先程も触れましたが、高額な教育費になりますが、イマージョン教育で得るものは大きいです。英語をマスターする過程において、別の国の思考や行動も学べますし、日本語の授業では取り入れない内容も、英語で教わることができるかもしれません。
また、金銭的な理由からイマージョン教育は小学校だけと決め、その間、英語の基礎を築かせてあげれば、中学校以降は独自の力で学べるかもしれません。外国語学習は、初期段階がとても重要です。発音と文法を自然な流れで小学生の時代に学んでおけば、あとで英語力を磨くのはそれほど大変なことではないかもしれません。
まとめ
イマージョン教育のデメリットも書きましたが、経済的に問題なければ、イマージョン教育を受けるのは日本にいながらバイリンガルになるための一番の近道だと言えます。両親が英語が話せなくても、日本にいながらお子さんが英語と日本語のネイティブと同等の語学力を身に付けつことができるのです。
今後、日本社会がさらにグローバル化し、英語が話せることにより、仕事の幅も広がり、さらに世界を舞台に大きく羽ばたけることでしょう。
イマージョン教育はお子さんの知的能力を上げ、多文化への理解力も手助けしてくれます。お子さんがまだ外国語だと気が付かないうちから自然な形で学べるイマージョン教育。かなりオススメの学習法です。