英語教育に向けた新しい動きが始まったばかりですが、「小学3年生から外国語活動が始まる!」と同じくらいよく話題に上るのがオールイングリッシュ授業です。
簡単に言うと「授業を英語で行うこと」なのですが、みなさんはオールイングリッシュ授業と聞いて、どんな様子を思い浮かべますか?
今回は「授業を英語で行うこと」をもう少し詳しく掘り下げて、オールイングリッシュのメリット・デメリットも併せてご紹介していきます!
目次
オールイングリッシュ授業とは?
オールイングリッシュ授業の目的は?
オールイングリッシュ授業の目的は、教師が使用する英語を生徒が理解できるようになることではありません。
「普段の授業で自然な英語を使用し慣れておくことで、授業以外でも生徒自身が英語を使える力をつける」というのが最終的な目的です。
オールイングリッシュ授業ってどんな授業?
「オールイングリッシュ授業」と聞くと、始まりから終わりまで全てを英語で行うのかとイメージしがちですが、決してそうではありません。
学習指導要領での「オールイングリッシュ授業」に関しての全文を抜粋してみると
「生徒が英語に触れる機会を充実させるとともに、授業を実際のコミュニケーションの場面とするため、授業は英語で行うことを基本とする。その際、生徒の理解の程度に応じた英語を用いるようにすること。」
と明記されていることがわかります。
授業を英語で行うことはあくまでも「基本」であり、また使用する英語についても生徒の理解度に合わせてください、ということですので、
何から何まで英語を使用するのではなく、必要な場合は適宜日本語を使用することも十分にあり得るのです。
しかし、日本語を使用することがあると言っても、”Open your textbook.”や”Make pairs.”など簡単な動作を指示するだけでは「オールイングリッシュ授業」とは言えません。
教科書や文法指導、アクティビティなど全ての場面で、可能な限り英語で行うことが目標とされています。
オールイングリッシュ授業はいつから?
オールイングリッシュ授業の始まりは?
平成21年3月9日に改訂された高校の学習指導要領で、「授業は英語で行うことを基本とする。」ということが初めて明記されました。
そして、平成25年12月13日に公表された「グローバル化に対応した英語教育改革実施計画」の中では、今後は中学校でも授業を英語で行うことを基本にしていくという記述がありました。
オールイングリッシュ授業は中学でも始まる?
平成29年3月31日、新しく改訂された学習指導要領が発表されました。
その中では、上記の計画での宣言通り、中学校の学習指導要領にも「授業は英語で行うことを基本とする。」ということが付け加えられました。
この新しい学習指導要領は、平成30年度より移行期間として既に始まっており、平成33年度には、全面実施される予定になっています。
オールイングリッシュ授業は実際に行われている?
平成29年12月1日の調査では、以下のように英語使用状況について結果が出ています。
中学校での英語使用状況
教師が発話を英語で行っている割合が50%以上の割合は、
1学年:70.1% 2学年68.4% 3学年67,5%
高校での英語使用状況
教師が発話を英語で行っている割合が50%以上の割合は、
コミュニケ―ションⅠ:60.4% 同左Ⅱ:54.8% 同左Ⅲ:42.0%
早くにオールイングリッシュ授業が始まっていたはずの高校よりも、まだ先行実施段階の中学校の方が英語の使用状況が高いようですね。
関連記事:2020年から始まる英語教育改革って何? いつから始まる? 何が変わるの?
オールイングリッシュ授業のメリット
日本でも英語に触れられる機会を持てる
普段から英語が飛び交う空間で暮らしている生徒は、なかなかいませんよね。
中学校では1回50分の授業が週に約3.5回ありますし、高校では学校や進路選択にもよりますが、週に4回以上は英語の授業があります。
そのため、英語圏での生活と同等にとまでは難しいものの、英語に触れる時間があるのとないのとでは大きな差となっていくでしょう。
英語を英語で考えられるようになる
最終的に「英語を使える」人材の育成を目指しているわけですから、英語を英語として使用できる力をつけることは不可欠です。
そのためには、英語を使用する場面ではできるだけ日本語を介さないことが重要になってきます。
授業の中で実際に英語を使用することを繰り返していくうちに、聞いた英語をそのまま英語で考えられるようになるのではないかと思います。
教師自らが生徒と同じ英語学習者であること
ALT(外国語指導助手)の体制が整いつつある中、日本人の教師が英語を積極的に使用していく意味とは、教師自身が生徒と同じ日本人である、というところにあると思います。
日本人だからこそ、教師はつまずきやすい点やわかりにくい意味などを理解してあげられますし、
何よりも「自分と同じ日本人の先生が、英語を使ってる!自分も英語を話せる可能性があるんだ。」と生徒は体感しやすく、英語学習においてとても良い動機付けとなります。
関連記事:イマージョン教育とは?経験ママが語るイマージョン教育のデメリット
オールイングリッシュ授業のデメリット
学校により実施状況が異なる
授業は英語で行うことを「基本」とする、というある意味曖昧な共通ルールなので、学校により、実施状況に大きな差が生まれてしまうことも考えられます。
通う学校により英語に触れる量が変わってしまうということもあまり良いことではありませんが、
それだけではなく、卒業した小学校や進学する高校との差が大きい場合もあり得るでしょう。
それは生徒にとってはかなりの負担になってしまいますが、現状のままではそのような不安は拭い去れないのではないかと思います。
また、新学習指導要領が先行実施され始めた段階では、旧学習指導要領で学習してきた生徒を新学習指導要領で教えていくことになりますので、
学校ではそのギャップも踏まえつつ授業をする必要があります。
そのため、学校間でしっかりとした連携が取れていなければ、生徒の負担は更に増えてしまいます。
教師の英語力に差がある
生徒のレベルや理解度、授業の場面ごとの状況に合わせて臨機応変に英語を使用し指導する必要があります。
今後「使える英語」に向けてディベートなどの指導も増えてきますから、より指導が高度なものになっていくことは言うまでもありません。
しかし、特別な研修を受けてきていない教師が行うのはなかなか難しく、
また現在の教師の多忙さを考えると指導力向上のための研修を実施することさえも難しいのが現状です。
現状の大学入試には対応しきれない
大学入試では、外部試験を利用するなど変革が進みつつありますが、やはりまだ初期の段階ですので、全ての大学が対応できているわけではありません。
そのため文法の穴埋め問題や英文和訳などの問題が出題されることもあり、現在始まっている「オールイングリッシュ授業」ではそれらの試験に対応しきれないことが考えられます。
学校の授業時数は限られていますから、教師が別に試験対策を行ったり、生徒自身が自分で勉強をしたりする必要が出てくるかもしれません。
幼児英会話スクールでのオールイングリッシュについて
先ほど、中学・高校での英語使用状況の割合を述べましたが、学年が上がるにつれて「オールイングリッシュ授業」の割合は下がっています。
学年に比例して学習内容が高度なものになっていきますから、その結果は当然のことなのかもしれません。
幼児英会話スクールでは、ほとんどの教室でオールイングリッシュが実施されています。
学校授業に比べてネイティブ講師の指導割合が高いこともありますが、日本人講師でも英語での指導に特化した研修を受けている講師がほとんどです。
レッスンも、身近な内容や動作、お話しなど、イメージと直結できる内容が多く、日本語がないから理解に苦しんでいる、ということはあまり見られないように思います。
もちろん適宜理解を助けるのに日本語を使用する場面は稀にありますが、9割方オールイングリッシュでレッスンをしていると言えます。
また、今まで英語での授業を受けてこなかった中学生・高校生に比べると、幼児は英語でのレッスンを受け入れやすく、オールイングリッシュでの学習効果が出やすい傾向にありますね。
本来は高校生からのスタートではなく、小学生、そして幼児からオールイングリッシュ授業を始めるべきなのかもしれません。
まとめ
さて、今回はオールイングリッシュ授業のメリット・デメリットをご紹介しましたが、いかがでしたでしょうか。
デメリットはまだ多くありますが、国を挙げて始まった英語教育改革ですので、今後少しずつ改善されていくことが期待されます。
今後、オールイングリッシュ授業が定着し、更に発展していくことと思われますから、幼児のうちから英語に慣れておくことができると安心ですね。