バイリンガル教育は、英語に限ったことではありません。
有意義な語学教育を受けるために、中国人向けに設立された中華学校という選択肢が、近年注目を集めています。
中国語・日本語・英語が堪能になり、日本の有名大学への進学率も高いという中華学校。
経済成長も著しく日本との距離も近い中国との関係は、今後より深くなっていくでしょう。
これから日本で中国語の需要は増していくと言われる中、中華学校に進学させたいと考える親がいても不思議はありません。
今回は、中華学校の魅力と、実際の教育方法に迫ります。
中華学校とは?
中華学校とは中国外に住む中国人のための学校のことを指し、日本には中国系、台湾系合わせて5つの中華学校があります。
横浜に2校
横浜山手中華学校 (小学校、中学校)
純日本人は18.5% (2017年 オフィシャルサイトより)
横浜中華学院 (幼稚園、小学校、中学校、高校)
東京に1校
東京中華学校 (小学校、中学校、高校)
関西に2校
大阪中華学校 (幼稚園、小学校、中学校)
純日本人は11% (2018年 オフィシャルサイトより)
神戸中華同文学校 (小学校、中学校)
横浜山手中華学校では、小学部、中学部の合計で約600人の子どもが在籍しています。中国にルーツを持つ子どもたちが多くなっていますが、定員に余裕があれば日本人も受け入れています。
日本人にとっては狭き門となり、以前は先着順だったものが、入学希望者が殺到したことにより入学試験をおこなうようになりました。
同校の小学部では中国語による授業が全体の7割ほどで、12歳ころまでに中国語を自然と身に着けることができるのが大きなメリットです。
中華学校が日本人に人気の理由は?
中華学校が日本人に人気の大きな理由は、
日本にいながら国際人を育成するという学校の教育方針、だと思います。
中華学校はグローバル社会に目を向けた教育方針で、中国語と日本語だけでなく英語にも力を入れたトリリンガル教育を実践しています。
もともと華僑のための教育機関として設立されましたが、アジア系なら国籍や出身に関してはおおらかな傾向であったようです。
この”国籍に対しておおらか”という校風から、様々な国籍の生徒が集まり、これからのグローバル社会で活躍するには必須の語学教育に力を入れている点が、日本人親の評価につながったのだと考えられます。
語学教育に熱心な中華学校
中華学校では中国語の授業だけでなく、英語、日本語にも力を入れています。
日本に居住しているため、ほとんどの子供は基本的な日本語での会話能力などは備わっているようです。
日本で使われる教科書を使用して、小学部から日本語の読み書きなどを習います。
また、理科や社会などの科目で日本語を使用したり、補足説明を日本語で行うなどの工夫をしています。
小学部の授業での使用言語の割合をみると、中国語11、日本語4、英語1 ほどになっています。
中華学校の英語教育は?
英語教育はどうなっているのでしょうか?
中華学校では英語にも力を入れていて、小学校から英語の授業があります。
小学校入学以前から中国語と英語を使いこなす児童も多くいる中で、さらにもう1言語として英語を取り入れることで、早くから多くの情報にふれ、多言語に慣れ親しむことができるという大きなメリットがあります。
中華学校の校風は?
横浜の中華学校出身の友人に質問したところ、学校内はとてもアットホームな雰囲気だったと言います。
人数がそれほど多くなく、みんな中華街近辺に住んでいることから、家族ぐるみでつながりが強いという環境のためだそうです。
華僑は経済的に裕福な家庭が多く、比較的ゆとりをもった生活をしている児童が多いという特徴もあります。
中華学校の学費は?
一般的に、インターナショナルスクールというと年間200万円前後の高学費な学費がかかってきますが、中華学校の学費は年間およそ50万円ほどと格安になっています。
日本の私立中学がおよそ50〜100万円ほどとなっていることからも、この学費がいかに低く設定されているかというのがおわかりになるかと思います。
中華学校は各種学校扱いとなるため、助成金は一部しか出ません。
しかし、OBからの支援がしっかりとしているため、リーズナブルな学費での学校運営を可能にしています。
中華学校の授業の方針は?
横浜山手中華学校では、バイリンガル教育の基礎の「能力開発教育」といったものを取り入れています。
教師から一方的に教える作業に終始するのではなく、子供たちにそれぞれ習ったことを復習させて、自分で考えさせる時間を多く取っていると言います。
そうすることで、自ら考える力をつけ、意志を発したり、制限なく能力を伸ばすことができるのです。
中華学校の卒業後の進路
中学・高校
中学や高校から、日本の学校を受験するなどして他校へ移る生徒が多くなっています。
高等部を設ける中華学校も存在しますが、実際に高等部まで進む生徒の割合は多くないと言います。
その理由として、中華学校はいわゆる日本が定める一条校ではないため、高等部まで進んでしまうと、日本での大学受験が難しくなってしまうという事情があります。
もし子供を中華学校に入れようと考えるなら、この辺りの方向性をしっかり考えておくことが大切でしょう。
横浜山手中華学校は、高等部まで進む生徒の減少を受けて、1985年に高等部を廃止しています。
大学
中華学校卒業生の進学先のデータを見ると、日本の有名私立大学に多く卒業生を排出しているのがわかります。
しかし、国際人の育成という教育方針の割に、海外の大学進学は意外に少なく毎年数えるほどです。
学部 |
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筑波大学 |
情報学群知識情報・図書館学類 |
慶應大学 |
総合政策学部 |
立命館アジア太平洋大学 |
国際経営学部 |
法政大学 |
社会学部 |
人間環境学部 |
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文学部英文学科 |
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國學院大学 |
文学部外国語文化学科 |
フェリス女学院大学 |
文学部英語英米文学科 |
白百合女子大学 |
文学部英語英文学科 |
拓殖大学 |
商学部国際ビジネス学科 |
外国語学部英米文学科 |
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商学部国際ビジネス学科 |
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東京工科大学 |
工学部機械工学科 |
東京都市大学 |
都市生活学部都市生活学科 |
グローバルスタディーズ学部 |
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武蔵野美術大学 |
油絵学科 |
神奈川大学 |
経済学部現代ビジネス学科 |
神奈川工科大学 |
創造工学部ロボットメカトロニクス学科 |
工学部機械工学科 |
参考資料:横浜中華学院大学進学一覧(横浜中華学院HPより)
まとめ
少し前までは、グローバル教育というと英語を話せるようになることと考えられていました。
しかし、これからは英語を使ってなにができるか、母国語と英語以外にどの言語を使えるのかまで問われる時代になってきています。
教育機会の選択肢が増えつつある日本で、中華学校のような特色あるグローバル教育をおこなう学校が注目を集めており、これからもこういった学校の人気は増していくのではないでしょうか。