「大切な我が子には、子どもの個性を伸ばす教育を受けさせたい。」誰もがそう考えるのではないでしょうか。
現在では、フィンランド教育、モンテッソーリ教育、レッジョ・エミリア教育、イエナプラン教育などなど、子ども一人ひとりを尊重することを最も重要視しているような教育思想が様々あります。
また、そんな教育思想を基にした学校が増えてきており、学校を選択できる時代になりました。
様々な教育思想が溢れている現代こそ、それぞれの教育方法のメリットやデメリットを把握した上で、学校選びは慎重にしたいものです。
そこで今回は、教育思想の一つである「シュタイナー教育」の特徴を徹底解説していきます!
目次
シュタイナー教育とは?
シュタイナー教育のはじまり
オーストリア出身のルドルフ・シュタイナーは、大変博学な人物で様々な分野にわたる専門家でした。
シュタイナーの教育思想に基づいてドイツのシュツッツガルトでモデル校を建てたことがシュタイナー教育の始まりだと言われています。日本では、1970年代から広まり始めました。
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シュタイナー教育の目的
シュタイナー教育では、「全人教育」を目的としています。
全人教育とは、知性だけではなく、生命力、肉体、感情など全体としてバランスがとれた自由人を育てるということ。
ここでいう自由とは、自分で意思決定し、それを行動に移すことができるという意味です。
【シュタイナー教育】発達段階の特徴
シュタイナー教育では、人間は7年周期を繰り返して成長し、21歳で人間として完成すると考えられています。
第一七年期 (生まれてから小学1~2年生頃まで)
身のまわりの良いものも悪いものもすべて敏感に吸収する時期と考えられています。<
- 生活リズムや身体づくりを重要視
- この時期のテレビは特に悪影響
- 文字や数字は教えない
第二七年期 (小学1年生~中学3年生頃まで)
美しいものをたくさん吸収し、感情や創造力が育っていく時期と考えられています。
- 芸術的な刺激を与えることを重要視
- 目に触れるすべてのものに気を使う
第三七年期 (中学2年生~大学4年生頃まで)
少しずつ自我が成熟する時期だと考えられています。
・自ら判断や表現をし、主体的に行動することを重要視
【シュタイナー教育】「感覚」の特徴
シュタイナー教育では、人間には12の感覚があると考えられており、大きく3種類の感覚
に分けられています。
意志感覚
意志感覚とは、触覚、生命感覚、運動感覚、平衡感覚です。
- おもちゃは木や羊毛などの自然素材のもの
- 歩行器などは誤った感覚を覚えさせるので×
- 過激だと言われるグリム童話なども原文のまま聞かせる
- 物語は抑揚をつけたり声色を変えたりせず静かに語る
感知感覚
感知感覚とは、嗅覚、味覚、視覚、熱感覚です。
- ご飯やパンのできたての良いにおいを感じさせる
- 果物や野菜もできるだけ有機栽培のものを与える
- 塩や砂糖、人工甘味料も使いすぎは×
- クレヨンや粘土も人工的なものは×、蜜蝋でできたもの
- シュタイナー教育の幼稚園では、刺激の少ない空間づくりを徹底(壁は淡いピンク、カーテンは光が透けるもの) また、味覚や視覚においては、「気質治療」という考え方があります。
〔味覚の気質治療の例〕
味覚では、味の性質が子どもの感覚に影響を与えると考えられています。
-
- いつも泣いているような子どもには甘味を与えて幸せな感覚を取り戻させる
やる気のない子どもには苦味を与えて意志を取り戻させる
- いつも泣いているような子どもには甘味を与えて幸せな感覚を取り戻させる
〔視覚の気質治療〕
色においては、反対色の影響が出ると考えられています。
- 大人しい子どもには青い服を着させ、反対色であるオレンジ色のエネルギーを感じさせ
る - 活発すぎる子どもには赤い服を着させ、反対色である緑色の落ち着いたエネルギーを感
じさせる
認識感覚
認識感覚とは、聴覚、言語感覚、思考感覚、自我感覚です。
- テレビやCDからの音楽は子どもにとって刺激が強すぎるため×
- 子どもに与える言葉はできるだけ肉声で、静かに語りかける
- また、シュタイナー教育では、周りの大人の生き方が子どもに多大な影響を及ぼすと考えられています。
- 子どもの前での振る舞いに気をつける
- 善い人間であろうとする努力している姿を見せる
【シュタイナー教育】学校の特徴
小・中学校の特徴 (1~8年生)
- 8年間担任が持ち上がり制
- 子どもの発達段階を考慮した担任独自のカリキュラム
- 国語や算数、理科社会などの主要科目は2~3週間サイクルで1つずつ学習していく。(エポック授業)
- 言葉や音楽を身体で表現する(オイリュトミー)
- 点数評価はしない
高校の特徴 (9~12年制)
- 担任はなし
- 地域社会で働く経験をする授業
- 議論や研究中心の授業
- 他国のシュタイナー学校との交換留学
【シュタイナー教育】メリットとデメリット
シュタイナー教育のメリット
- 子どもらしい子ども時代を過ごすことができる
- 自分で考え、行動できるようになる
- 芸術的な感覚に長け、創造力が育つ
シュタイナー教育のデメリット
- 基礎学力が身につきにくい
- コミュニケーション力が育ちにくい
- 独特の雰囲気を持ち、校外では孤立してしまうことがある
シュタイナー教育を受けた有名人
斎藤工さんと村上虹郎さん
俳優の斎藤工さんと村上虹郎さんは、神奈川県相模原市にあるシュタイナー学園に在学していました。
斎藤工さんは、幼少期から6年生まで在学し、その後は公立の小学校に転校しました。
転校後はシュタイナー教育との違いに戸惑うこともあったようです。
シュタイナー教育では、特にオイリュトミーや演劇の授業が印象的だったと語っています。
村上虹郎さんは、幼少期から8年生まで在学していました。
シュタイナー教育では、絵はもちろん文字も黒の使用は禁止されていたようで、クレヨンや色鉛筆を使っていたのだとか。
教科書がないことが印象的でおもしろかったと語っています。
黒柳徹子さんも受けていた?
シュタイナー教育を受けていたと有名になっている黒柳徹子さんですが、厳密には少し違っているようです。
日本では大正デモクラシー後に、より自由な教育を目指そうとする運動が広まりました。
その影響を受けて創設されたのが、トモエ学園の前身である自由ヶ丘学園です。
黒柳徹子さんは、東京都の自由が丘にあるトモエ学園に通っていました。
その後も自由な教育として、様々な教育思想を採用した学校が設立されました。
有名な教育思想としては、シュタイナー教育やモンテッソーリ教育などです。
現在それらの自由な教育は、総称して「オルタナティブ教育(代替教育)」と呼ばれています。
つまり、シュタイナー教育の学校もトモエ学園もオルタナティブ教育を採用した学校の一つであるため方向性は似ていますが、教育思想としては違う学校のようですね。
【シュタイナー教育】どう取り入れる?
さて、シュタイナー教育について徹底解説してまいりましたが、みなさんはどう感じられましたか?
シュタイナー教育ではご紹介した他にも、早期教育の否定や競争心をあおるスポーツの禁止、予防接種・近代西洋医学の否定などといった実践も目にすることがあり、日本では批判的な意見の多い教育思想です。
私の個人的な感想としても、正直なところ、少し極端で閉鎖的な印象を受けました。
しかし、ベースの考え方には賛同できます。
実際に私の友人の両親がシュタイナー教育の思想を取り入れた育児を実践していましたが、その子は独特な雰囲気は多少あったものの、とても実直で優しく、聡明な子でした。
シュタイナー教育に関しては、何から何まで100%を実践するというよりも、全体的に60%程度を目安に、家庭でできる範囲でやんわりと実践することを、私はおすすめします。
シュタイナー教育のおすすめ本
7歳までのシュタイナー教育
バーバラ・J. パターソン (著), パメラ ブラドレー (著), Barbara J. Patterson (原著), Pamela Bradley (原著), 渡部 まり子 (翻訳)
我が家のシュタイナー教育
おうちでできるシュタイナーの子育て
教育思想は取捨選択が必要
さて、今回は「シュタイナー教育」の特徴を徹底解説しましたが、いかがでしたでしょうか。
何事もバランスが大切ですから、1つの教育思想に浸りすぎず、良いところを取り入れて実践していきたいですね。